バルトーク「ルーマニア民族舞曲」の難易度を実体験をもとに解説!【無料楽譜あり】

    バルトークの代表作として名高い「ルーマニア民族舞曲」。

    その情熱的で土俗的な魅力に惹かれ、「いつか弾いてみたい」と憧れている方も多いのではないでしょうか。

    しかし、いざ楽譜を前にすると

    • 「これってどのくらいのレベル?」
    • 「全6曲、どれから弾けばいいの?」

    など、その独特なリズムや和音に圧倒されてしまうことも少なくありません(リズム感難しい・・・)。

    そんな人のために!

    この記事では、ピアノ中級者から上級者まで、多くの方が気になる「ルーマニア民族舞曲」の難易度を、全6曲1曲ずつ徹底解説します。

    全体の難易度から、各曲の技術的なポイント、効果的な練習方法、そして記事の後半では無料で使える楽譜情報も紹介しますので、ぜひ最後まで読んでくださいね!

    筆者は3歳からピアノを開始。紆余曲折を経て、かれこれ30年以上ピアノに触れています。音大には行っておらず、なぜか哲学で修士号というナゾの人生です。

    >>画像出典:アマゾン:バルトーク:ピアノ作品集

    バルトーク「ルーマニア民族舞曲」とはどんな曲?

    難易度解説に入るまえに、豆知識的な寄り道を・・・。楽曲解説として紹介しますね。

    じつは本作「ルーマニア民族舞曲」は、ただの「ルーマニア風」の曲というわけではないんです。作曲家バルトークが自分の足で東ヨーロッパを旅し、現地の人々が奏でる旋律を採譜・研究して生まれた、まさに「本物の民族音楽」に根差したピアノ組曲です(民俗音楽蒐集家でもあったので)。

    そのため、伝統的なクラシック音楽の枠組みを超えた、独特の生命力と躍動感に満ち溢れた作品でもあります。

    本作は、1915年、バルトーク34歳のときの作品。バルトークの才能が一段と花開いた時期で、「ルーマニア音楽の年」に位置付けられています。

    参考|ピティナ・ピアノ事典|ルーマニア民俗舞曲 BB 68 Sz 56

    ルーマニア民族舞曲の楽曲構成(全6曲)

    では、全体の構成を見てみましょう。

    本作は、性格の異なる6つの舞曲で構成されています。

    1. 第1曲:棒踊り (Jocul cu bâtă) – 力強く、大地を踏みしめるような踊り。
    2. 第2曲:飾り帯の踊り (Brâul) – 軽やかでリズミカルなステップ。
    3. 第3曲:足踏み踊り (Pe loc) – 物憂げで、どこか神秘的な雰囲気。
    4. 第4曲:角笛の踊り (Buciumeana) – 哀愁漂う旋律が印象的な、歌うような踊り。
    5. 第5曲:ルーマニア風ポルカ (Poarga Românească) – エネルギッシュで華やかな踊り。
    6. 第6曲:速い踊り (Mărunțel) – 熱狂的なフィナーレを飾る、技巧的な踊り。

    元々はピアノ曲として作曲されましたが、その魅力から、現在ではヴァイオリン版やオーケストラ版など、様々な編成に編曲され、世界中で愛されています。

    本作は全編を通して、当時のハンガリー王国領トランシルヴァニア地方の民謡をもとに作曲されました。

    ちなみに、バルトーク本人の指示によれば、全体の長さは4分15秒とのこと。ただ、バルトーク自身による録音は4分47秒だったそうですよ!

    ルーマニア民族舞曲の難易度を全曲徹底解説!

    ということで、本題の難易度解説です。

    結論!
    全体の難易度としては、ブルグミュラー25の練習曲を終えたあたりからソナチネアルバムレベルの学習者が挑戦できる曲が含まれています。ただし、全6曲を通して弾く場合はソナタレベルに匹敵する集中力が必要になるでしょう。全音ピアノピースでは、難易度「C」に設定されています。

    筆者はソナチネアルバム終了〜モーツァルトのソナタあたりで取り組みました。急に興味が湧いたので。全体の演奏時間も短いので、比較的チャレンジしやすい作品だと思います。

    それはさておき。
    ここでは、各曲の難易度を★5段階で評価しつつ、演奏のポイントを解説します。

    第1曲:棒踊り (Jocul cu bâtă)

    難易度:★★☆☆☆

    • 技術的ポイント: 正確なリズムとキレのあるスタッカートが求められます。特に左手の和音が力強く、かつ歯切れ良く弾けるかが鍵です。
    • 表現のポイント: 男性たちが棒を持って勇壮に踊る姿をイメージしましょう。重々しくも躍動感のある表現が大切です。比較的取り組みやすい曲なので、この組曲への入り口として最適です。
    出典:YouTube

    第2曲:飾り帯の踊り (Brâul)

    難易度:★★★☆☆

    • 技術的ポイント: 右手の軽快な指の動きと、装飾音符の滑らかな処理がポイント。テンポが速く、リズムが崩れないように注意が必要です。
    • 表現のポイント: 男女が楽しげにステップを踏む様子を思い浮かべて。軽やかさと愛らしさを表現しましょう。
    出典:YouTube

    第3曲:足踏み踊り (Pe loc)

    難易度:★★★★☆

    • 技術的ポイント: 重音と和音の響きをコントロールする力、そして深いペダリングが求められます。一見ゆっくりですが、独特の間(ま)と響きのグラデーションを作るのが非常に難しい曲です。
    • 表現のポイント: 物憂げな旋律の中に、内に秘めた情熱を感じさせる表現が必要です。バルトーク特有の神秘的な世界観を堪能できる一曲。
    出典:YouTube

    第4曲:角笛の踊り (Buciumeana)

    難易度:★★★☆☆

    • 技術的ポイント: 右手の歌うようなレガート奏法が中心です。テンポ・ルバート(テンポを自由に揺らすこと)で即興的に歌い上げる表現力が試されます。
    • 表現のポイント: 東欧的な哀愁をたっぷりと表現しましょう。透明感のある響きを出したいところです。
    出典:YouTube

    第5.曲:ルーマニア風ポルカ (Poarga Românească)

    難易度:★★★★☆

    • 技術的ポイント: 速いパッセージと正確な跳躍が連続します。特に左手の素早い和音移動は、入念な練習が必要です。
    • 表現のポイント: エネルギッシュで華やかな雰囲気が魅力。転がるような勢いを保ちつつ、粗野にならないようコントロールすることが大切です。
    出典:YouTube

    第6曲:速い踊り (Mărunțel)

    難易度:★★★★★

    • 技術的ポイント: この組曲で最も技術的に難しい曲です。圧倒的なスピードの中で、一音一音をクリアに打鍵する指の独立性が求められます。後半の畳みかけるようなパッセージは圧巻です。
    • 表現のポイント: 熱狂的なフィナーレを築き上げる推進力が不可欠。聴衆を興奮の渦に巻き込むような、圧倒的なエネルギーで弾き切りましょう。
    出典:YouTube

    どの曲から弾くのがおすすめ?

    挑戦しやすさで言えば第1曲「棒踊り」、バルトークらしい神秘的な響きを味わいたいなら第3曲「足踏み踊り」、そして自分の技術を試したい上級者には第6曲「速い踊り」がおすすめかなと思います。

    ルーマニア民族舞曲:演奏効果が劇的にアップする練習のコツ

    弦楽合奏版:出典:Youtube

    この組曲を弾きこなすには、普段のクラシック音楽とは少し違ったアプローチが必要です。
    実際に演奏した感じた、ポイントを紹介しますね(かなり前の記憶ですが)。おもなポイントは以下の3つかなと。

    • 民族リズムを体に叩き込む
    • 特殊な和声を理解する
    • 難関パッセージの攻略法

    一つずつ解説します。

    民族リズムを体に叩き込む
    何よりもまず、名演のCDやYouTubeを聴き込みましょう。楽譜だけでは理解しにくい独特のリズムや間(ま)、アクセントの付け方を耳から学ぶことが、上達への一番の近道です。

    特殊な和声を理解する
    バルトーク特有の不協和音に戸惑うかもしれません。まずはゆっくり、部分的に取り出して和音の響きをじっくりと確かめましょう。響きの色彩の変化に耳を澄ませることで、徐々にその魅力が分かってきます。

    難関パッセージの攻略法
    第6曲の高速パートなど、指がもつれやすい箇所は「片手練習」「リズムを変えた練習(付点リズムなど)」「ゆっくりから徐々にテンポを上げる練習」といった基礎練習を徹底することが、急がば回れの攻略法です。

    全体的に激ムズポイントはあんまりない曲だと思います。独特なリズムも、弾いているうちに慣れますし、「けっこう楽しい!」と思えるようになるはずです!

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    バルトーク「ルーマニア民族舞曲」難易度解説:まとめ

    今回は、バルトークの「ルーマニア民族舞曲」について、その難易度や魅力を徹底的に解説しました。

    独特のリズムや和声に最初は戸惑うかもしれませんが、それこそがこの曲の尽きない魅力の源泉です。クラシック音楽の新たな扉を開いてくれる、素晴らしい体験があなたを待っています。この記事を参考に、ぜひ情熱的なバルトークの世界に挑戦してみてください。

    【この記事のポイント】

    • 「ルーマニア民族舞曲」は、本物の民族音楽に基づいたピアノ組曲。
    • 全体の難易度はブルグミュラー修了~ソナタレベルと幅広い。
    • 第1曲は比較的弾きやすく、挑戦の第一歩におすすめ。
    • 第3曲は技術的に難しいが、バルトークの神秘的な世界観が凝縮されている。
    • 第6曲は超絶技巧を要する最難関曲。
    • 練習の鍵は、音源をよく聴いて「民族リズム」を掴むこと。
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