この記事では、イギリスを代表する作曲家エルガーの代表曲を紹介します。
エルガーといえば、イギリス第二の国歌とも称される『威風堂々』が有名ですよね。
エルガーの名前は知らなくても、作品は誰でも1度は聴いたことがあるのではないでしょうか。
しかし実は、エルガーは交響曲や管弦楽曲、室内楽曲などの分野でも多くの傑作を残しており、
現在でもコンサート・レパートリーとして親しまれています。
そこでこの記事では、エルガーの代表曲8選と作品の特徴や魅力をざっくりと解説します。
これまでエルガー作品についてあまり関心のなかった方でも、
きっと興味が持てる作品ばかりですの、ぜひ最後までご一読ください。
「エルガーの生涯について一応知っておきたい」という方はコチラから。
また、毎度のことながら、最高傑作に関しては「独断と偏見」および人気度を考慮して書いていますので、その旨ご容赦ください。
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エルガーの代表曲8選
作曲技法の多くを独学で学び、着実にその名声を築き上げたエルガー。
人生の後半ではナイトの称号を授与され、名実ともにイギリスを代表する世界的作曲家となりまたした。エルガーの作品には、彼の思慮深い内面性が美しく表現されています。
エルガーの代表曲その①、交響曲第1番
1曲目はエルガーを代表する交響曲『交響曲第1番』です。
優しいピアノ曲やヴィアオリン曲の印象が強いエルガーですが、
交響曲でも傑作を残しています。
1907年から1908年にかけて作曲された本作は、
初演を指揮したハンス・リヒターに献呈されました。
50歳にして最初の交響曲を作曲したと考えると、
遅咲きの交響曲デビューとなったものの、
その分、エルガーの円熟したオーケストレーションが楽しめる名曲となっています。
初演を指揮したハンス・リヒターは、本作について「当代最高の交響曲」と絶賛したそうですよ。
また、初演から1年で100回も演奏される程の人気を獲得し、その人気は現在もなお衰えることはありません。全4楽章構成で、演奏時間はおよそ1時間です。
エルガーの代表曲その②、弦楽セレナード
2曲目は管弦楽曲の代表曲『弦楽セレナード』です。
こちらは19世紀末の1892年、エルガー35歳の時の作品となっています。
この頃のエルガーは作曲家として大きな成功をする前段階の時期で、
地元ウスター州のアマチュア音楽家にピアノやヴァイオリンを教えたり、楽団の指揮をしていた時期でした。
とはいえ、作曲も本格的に手掛けていた時期でもあり、
本作からはエルガーの高い音楽的完成度がうかがえます。
1896年にベルギーにて全曲初演を迎え、
1905年3月、エルガー自身の指揮によりロンドン初演が行われました。
『弦楽セレナード』というと、チャイコフスキーやドヴォルザークの作品も有名ですね。これを機会に聴き比べてみてはいかがでしょうか。
エルガーの代表曲その③、チェロ協奏曲
エルガーを代表する協奏曲といえば『チェロ協奏曲』です。
20世紀におけるチェロ協奏曲の中でも傑作の1つとされ、
現在でもエルガー作品のレパートリーとして広く親しまれています。
1919年にロンドンにてエルガー本人の指揮により初演されました。
チェリストのアルバート・コーツの不調により初演は大成功とはなりませんでしたが、
後日ビアトリス・ハリスンのチェロによる演奏が大成功を収め、エルガーを代表する作品となりました。
緩ー急ー緩ー急の4楽章構成で、演奏時間はおよそ30分です。
こちらもドヴォルザークの『チェロ協奏曲』と聴き比べをお楽しみください。
エルガーの代表曲その④、セヴァーン組曲
エルガー作品には、吹奏楽(ブラスバンド)もあります。
本作はその中でも代表的な作品。
1930年のエルガー晩年の頃の作品で、
本作は作家バーナード・ショーに献呈されています。
セヴァーン川とは、イギリス最長の川のことです。
参考までにコチラをどうぞ👇
国際ブラスバンド大会の課題曲として委嘱され、
ロンドンの水晶宮(クリスタル・パレス)にて初演が行われました。
のちに管弦楽版に編曲され、エルガー本人指揮によるレコーディングも残されています。作品は全体で20分程度で、随所にエルガーの故郷ウスターの情景が描かれていると言われています。
エルガーの代表曲その⑤、交響的前奏曲「ボローニア」
こちらは管弦楽曲の代表作、交響的前奏曲「ボローニア」です。
1915年、ポーランドの指揮者エミル・ムイナルスキーの委嘱により作曲されました。
作品には、ポーランド国家やショパン、パデレフスキといった作曲家たちの楽曲がモチーフとして用いられています。
同年、エルガーによって初演が行われ、
作品のモチーフにも採用されたパデレフスキーへ献呈されました。
「交響的」と銘打たれているだけあって、
前奏曲ながらも迫力のある構成が特徴です。
エルガーの代表曲その⑥、エニグマ変奏曲
エルガーの最高傑作の1つと称される管弦楽による変奏曲です。
一般に「エニグマ変奏曲」の名で知られていますが、
正式には『管弦のための独創主題による変奏曲』というタイトルが付けられています。
1898年から1899年にかけて作曲され、
作品内で「描かれた友人たち」に献呈されました。
さまざまなメディアでも登場する「エニグマ」という言葉、
これはギリシャ語で「なぞかけ」「謎解き」を意味するそうですよ。
本作には2つの「エニグマ」があるとされていますが、
そについては、あえて言及しません。
どんな謎があるのか調べてみると、きっとさらに教養が深まると思います!!
ちなみに本作は、仕事から帰ったエルガーが、何気なく弾いたピアノのメロディーから着想を得たのだとか。それを聴いた妻キャロラインから「もう一度繰り返して」と頼まれ、作品の構想が膨らんだとも言われています。
エルガーの代表曲その⑦、ゲロンティアスの夢
作品の完成度や規模、神秘性やテーマの面から考えると、おそらくこの作品が最高傑作かなと思います。
それはさておき・・・。
本作は妻キャロラインとの結婚の際、
ウスター州の神父がエルガーにプレゼントした長編詩『ゲロンティアスの夢』をモチーフにしています。
エルガーはこの作品に大変な感銘を受けたそうで、
およそ8年にもわたり、エルガーはこの作品に夢中になったそうです。
その後、本作をオラトリオとして作曲し、1900年3月にバーミンガム音楽祭にて初演されました。
また、本作を聴いた作曲家リヒャルト・シュトラウスがレセプション・パーティで「イギリスの最初の進歩的な作曲家マイスター・エルガーの成功と健康のために乾杯」と祝辞を述べたことで、一躍ヨーロッパでも知られる人気曲となり、同時にエルガーの名声が高まるきっかけにもなりました。
全2部からなり、演奏時間は90分程度です。
エルガーの代表曲その⑧、愛の挨拶
そしてラストは『威風堂々』と並び、エルガーのもっとも有名な作品『愛の挨拶』です。本作は、1888年に結婚した妻キャロラインとの結婚記念として贈った作品。
エルガー作品としては初期の作品ですが、
その純粋さと愛らしいメロディーから現在も世界中の人々に愛されている名曲です。
余談ですが、エルガーとキャロラインは宗教の違いがあり、
また売れない作曲家(エルガー)と陸軍将校の娘という格差もありました。
当然、キャロラインの父は結婚に反対し、2人の仲を認めませんでした。
しかし父の反対を押し切って二人は結婚。
生涯の伴侶として末長く幸せに暮らしました。
エルガーの作曲家としての成功は、妻キャロラインの支えなくしてはありなかったでしょう。
もともとはピアノ曲として作曲されましたが、
ヴァイオリンをはじめ、さまざまな楽器で演奏されています。
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エルガーの最高傑作『威風堂々』の解説
ここまでエルガーの代表曲を8つ紹介してきました。
「あの作品が入ってないじゃなかい!」と思われた方もいることでしょう。
それは重々承知していますが、他の作品はまた別の機会・別の形で紹介しますので、
ご容赦ください。
ということで、エルガーの最高傑作には『威風堂々』を選びました。
認知度という意味では、ダントツかなと思います。
そしてなにより「テンション上がり」ますよね。
では簡単に解説していきます。
『威風堂々』の解説:『威風堂々』とは行進曲集である。
『威風堂々』はエルガーが完成させた行進曲集です。
作品は1番から6番まであり、最後の6番が完成したのは、なんと21世紀に入ってからのこと。現代の作曲家アンソニー・ペインの補筆(楽譜を補うこと)により完成されました。
1番から6番の中で、もっとも有名なのが『威風堂々第1番』。
『威風堂々』といえばこの作品を指すことがほとんどですが(日本の場合)、
あくまでも「行進曲集の名前」であることを覚えておくと、ちょっと教養になります。
『威風堂々第1番』は1901年に作曲され、同年10月に初演を迎えました。
原題は「Pomp and Circumstance」で、シェイクスピアの戯曲『オセロ』のセリフから取られています。
誰が『威風堂々』と訳したかは、わかりませんでした・・・。
この曲です👇。
国王エドワード7世から「歌詞を付けて欲しい」と言われる
この作品に感銘を受けた当時の国王エドワード7世は、
エルガーに「この作品に歌詞をつけてほしい」と要望し、
すぐさま『戴冠式頌歌(たいかんしき・しょうか)』を作曲。
作中「希望と栄光の光」において、中間部のメロディーを採用しました。
ちなみに、エドワード7世の在位は1901年から1910年と短いものでしたが、
日本やフランス、ロシアとの関係を深めたことから「ピース・メーカー」とも呼ばれています。
イギリス最大の音楽祭BBCプロムスでは、メインテーマとも言える作品です。
エルガーの作品の特徴や魅力について
最後にエルガー作品の特徴や魅力について紹介します。
簡単に4つにまとめたので、作品を楽しむ際の参考にしてみてください。
エルガーの作品の特徴や魅力その①心に響く旋律
エドワード・エルガーの作品は、一度聴いたら忘れられない旋律が魅力。
「エルガーの旋律」と言えば、感動的で歌心のある音の流れを思い浮かべる音楽愛好家も多いのではないでしょうか。
例えば、エルガーの『チェロ協奏曲』の冒頭部分は、深い感情を湛えた旋律で聴く者の心を捉えます。また、『威風堂々』行進曲の主題は、イギリス国民の誇りを象徴する音楽として広く愛されています。シンプルながらも、心に直接訴えかける力がエルガーの旋律の特徴です。
エルガーの作品の特徴や魅力その②色彩豊かなオーケストレーション
エルガーの管弦楽法は、各楽器の特性を生かしつつ、豊かな音の風景を描き出します。代表作『エニグマ変奏曲』では、様々な楽器の組み合わせによって多彩な音色が生み出されています。特に有名な変奏曲「ニムロッド」では、弦楽器と木管楽器の絶妙なバランスが、静かな崇高さを表現。
エルガーの交響曲第1番も、オーケストレーションの妙技が光る作品として知られています。
エルガーの作品の特徴や魅力その③感情表現の名手
豊かな感情表現もエルガーの魅力の1つ。
エルガーは自身の経験や感情を音楽に込め、聴衆の心に強く訴えかけます。
例えば、エルガーのチェロ協奏曲は第一次世界大戦後の喪失感や悲哀を表現しており、深い悲しみに満ちた第3楽章は必聴です!
一方、エルガーの交響曲第1番の終楽章では、困難を乗り越えた後の勝利と喜びが力強く表現されています。作品を聴くと、作曲家の心の動きが音を通じて伝わってくるような感覚さえ覚えます。
エルガーの作品の特徴や魅力その④新しいイギリス音楽の開拓者
エルガーは、イギリスの民謡や教会音楽の要素を自身の作品に取り入れつつ、近代的な和声法や管弦楽法を駆使しました。
たとえば、今回紹介sいた『ゲロンティアスの夢』は、イギリスの合唱音楽の伝統を踏まえながら、ワーグナーの影響を受けた斬新な音楽語法を用いています。
また、エルガーの『弦楽セレナーデ』も、イギリスの田園風景を想起させる旋律を、当時としては新しい弦楽器の技法で表現しています。このようなエルガーの音楽スタイルは、イギリス音楽に新しい地平を切り開き、後世の作曲家に多大な影響を及ぼしました。
エルガーの代表曲まとめ
結構な分量になってしまいました・・・。
これでもかなり足りない感じがしますが、また別の機会に記事を追加したいと思います。
『威風堂々』や『愛の挨拶』以外にも、エルガーの作品には美しいものがたくさんありますので、この記事をキッカケにぜひ他の作品も触れてみてはいかがでしょうか。