この記事では、ベルリオーズの代表曲と共に、作品の特徴や魅力、最高傑作も紹介します。
ロマン派音楽の先駆者として知られるベルリオーズの作品には、どのようなものがあるのでしょうか。
一般的には初期の傑作『幻想交響曲』が有名ですが、
オペラや宗教曲、交響曲の分野でもベルリオーズは優れた作品を残しています。
ホンの少しだけご存じの方から、まったく聴いたことがない方まで楽しめるよう、
幅広いジャンルから作品を選曲しましたので、ぜひ参考にしてください。
また、いつものことで恐縮ですが、
最高傑作については筆者の独断と偏見によりますので、
その旨をあらかじめご了承ください!
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ベルリオーズの代表曲8選
作曲家として浮き沈みの激しい人生を送ったベルリオーズ。
いくつかの作品は大きな成功を収め、また指揮者としても活躍したものの、
生前は評価されなかった作品も多かったようです。
しかし彼の没後、その作品群は再度見直され、
現在では多くの聴衆から愛されています。
ベルリオーズの代表曲①、幻想交響曲
1曲目はベルリオーズをもっとも代表する作品『幻想交響曲』。
一番有名であり、演奏頻度も非常に高い作品です。
本作はベルリオーズがローマ賞獲得のために作曲した作品であり、
これにより見事グランプリに輝きました。
作曲年代は1830年。ベルリオーズにとって最初の交響曲であると同時に、
ロマン派音楽を代表する作品でもあります。
各楽章には興味を引くタイトルがつけられており、
これは「恋に深く絶望しアヘンを吸った、豊かな想像力を備えたある芸術家」の物語を音楽で表現したものであることから命名されたとのこと。
初演は作曲年と同年の1830年で、好評により、第4楽章がアンコールでもう一度演奏されたと言われています。
全5楽章で演奏時間はおよそ50分〜1時間程度。
ベルリオーズの代表曲その②、イタリアのハロルド
ヴァイオリンのヴィルトォーゾであるニコロ・パガニーニの依頼によって作曲されたヴィオラと管弦楽のための作品です。
上記『幻想交響曲』を聴いたパガニーニが、あまりの感動により、
ベルリオーズに依頼したのだとか・・・。
また、作曲当時のベルリオーズは金策に困っていましたが、資金援助をしたのもパガニーニだと言われています。
作品について、パガニーニは「物足りない」とやんわりと落胆を示したそうです。
それに対しベルリオーズは「あなたが満足いくような曲はあなたにしか書けない」と言い一度は作曲が中断されたましたが、パガニーニの意図を離れ、ヴィオラ独奏付き交響曲として完成させました。
作品の舞台は、ローマ賞受賞で訪れたイタリアのアブルッツィ地方がモデルと言われて胃います。
また『幻想交響曲』と同じく、各楽章にタイトルがつけられいます。
ベルリオーズの代表曲その③、葬送と勝利の大交響曲
『幻想交響曲』が最初の交響曲であるなら、
こちらはベルリオーズ最後の交響曲です。
当初は大編成オーケストレーションにより、軍楽隊の演奏を構想していましたが、
現在では交響曲としてコンサートホールでも演奏されています。
日本では演奏機会は少ないものの、
欧米では宗教的式典や軍楽隊の演奏会などでしばしば演奏されている作品です。
「交響曲」と銘打ってはいますが、
『レクイエム』『テ・デウム』のように、宗教的作品としても位置付けられています。
初演は1840年。パリの街頭で行われました。
ベルリオーズ本人が指揮を担当し、なんと200人もの軍楽隊で演奏したそうですよ!
全3楽章構成で、演奏時間は35分程度です。
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ベルリオーズの代表曲その④、劇的交響曲「ロメオとジュリエット」
シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を題材にした合唱、独唱、プロローグ付きの交響曲です。
冒頭のレチタティーヴォが物語へのワクワク感を掻き立ててくれます。
1839年に作曲が着手され、同年11月に初演を迎えました。
初演ではベルリオーズ自らが指揮を担当し、成功を収めています。
ちなみに、作中の歌詞も戯曲に基づいてベルリオーズが散文で執筆したとのこと。
この作品は後のリヒャルト・ワーグナーに大きな影響を与えており、
ワーグナーの大作『トリスタンとイゾルデ』はベルリオーズに献呈されています。
劇的交響曲の名の通り、物語は壮大な構想を持っており、
全7部構成で演奏時間は90分程度です。
ベルリオーズの代表曲その⑤、「ローマの謝肉祭」序曲
交響曲が続いたので、管弦楽曲からも1曲。
本作は1844年に作曲された作品で、
『幻想交響曲』と同様、もっとも演奏機会の多いベルリオーズを代表する作品です。
演奏会用序曲として作曲されているため、本編にあたるオペラ「ローマの謝肉祭」という作品はありません。
ちなみに「謝肉祭」とは、いわゆる「カーニバル」のこと。
キリスト教カトリックにおける、季節ごとの「感謝祭」のようなものです(ざっくり)。
たとえば、謝肉祭をテーマとした作品としては、この人の作品が有名ですね。
参考までに。
1844年の初演は大成功を収め、現在でもベルリオーズを代表する管弦楽曲として親しまれています。日本でも、なんと1916年は初演が行われたそうですよ!!
代表曲その⑥、荘厳ミサ曲
宗教曲でも優れた作品を残したベルリオーズ。
そのなかでも、本作はその最初期の作品です。
作曲されたのが1825年ということから、
ベルリオーズ23歳頃の作品ですね。
そのためか、宗教曲でありながら「エネルギッシュさ」が溢れた作風が特徴です。
同年7月にパリのオペラ座にて初演が行われ、
最初の成功を獲得したベルリオーズにとって記念碑的作品でもあります。
宗教曲に馴染みのない方でも「合唱付き作品」として大変楽しめると思います。
代表曲その⑦、オペラ「トロイアの人々」
数は多くないものの、ベルリオーズはオペラも手がけています。
この作品は全5幕構成のグランド・オペラ。
タイトルの通り、題材はギリシャの「トロイの木馬」が登場する叙事詩『アエネーイス』から採用されています。
1855年から1856年にかけてワイマールに滞在していたベルリオーズ。
そんな折、フランツ・リストと同棲していたヴィトゲンシュタイン侯爵夫人に同作のオペラ化を話したところ、オペラ化を勧められ作曲に至ったとされています。
侯爵夫人の後押しを受けたベルリオーズはすぐさま作品に取り掛かり、
わずか2ヶ月で台本を書き上げ、作曲開始から2年後の1858年には全曲を完成させました。
全体で4時間を超える超大作であり、
21世紀に入り再び評価が高まりつつあるオペラでもあります。
代表曲その⑧、レクエイム
最後は宗教曲『レクイエム』です。
このブログでは、たびたび作曲家のレクイエムを紹介してきました。
「レクイエム」とは死者のためのミサ曲を意味します。
本作は1837年、フランス政府から7月革命の犠牲者及び、ルイ・フィリップ王の暗殺未遂で犠牲となった人々を慰霊する目的で作曲されました。
オーケストレーションや合唱の規模もベルリオーズにより指定されており、
合唱が700人〜800人の場合も想定されているのが興味深い点です。
作曲年と同年の1837年12月、アンヴァリッド礼拝堂にて初演が行われ、
大きな成功を収めました。
レクイエム全体の構成は以下の通りです。
ベルリオーズの最高傑作は?
ここまで、ベルリオーズのおすすめ作品を8曲紹介しました。
もちろん、これ以外にも名曲がありますので、ご興味を持たれた方は、ぜひご自分のお好みの作品を探してみてください!
ということで・・・。
「ベルリオーズの最高傑作は?」という問題ですが、
筆者は次の作品を選びました。
「ファウストの劫罰」について
「『幻想交響曲』じゃないの?」という声が聞こえてきそうですが・・・。
確かに、めちゃくちゃ優れた作品ではありますが、
これってベルリオーズの初期の作品なんですよね。
しかもよーく聴いていると、
後期になるに従って音楽の多様性やオーケストレーションが大きくなり、
よりベルリオーズらしさが完成していく気がしています。
本作は、そんなベルリオーズが40代の頃の作品。
1845年に作曲が再開され、翌1846年に初演を迎えています。
「再開され」というのは、
1824年ごろ、ドイツの文豪ゲーテの『ファウスト』に感激したベルリオーズが「一度作品にしている」から。
その作品は『ファウストからの8つの情景』というタイトルが付けられ、
楽譜をゲーテに献呈までしています。
しかし残念ながらゲーテは関心を示さず、
そのまま20年近く放置されてしまいます。
初演は成功せず
そうして20年の時を経て、1846年12月に初演を迎えます。
大成功かなと思いきや、初演はまったく観客が入らず、
わずか2回で上演が中断。
しかも、主催したオペラ=コミック座はこれにより大赤字という事態に。
結局、ベルリオーズの生前は成功とはならず、死後になりようやく評価されました。
楽曲・楽器編成は?
本作『ファウストの劫罰』は、合唱付きの管弦楽曲です。
全4部19場構成で、演奏時間はおよそ2時間30分の大作となっています。
「ラコッツィ行進曲」は有名なので、聴いたことがある方も多いかもしれません。
楽器編成は以下の通り。
<木管楽器>
フルート3(ピッコロ1持ち替え)
・オーボエ2(コーラングレ1持ち替え)
・クラリネット2
・バス・クラリネット
・バスーン4
<金管楽器>
・ホルン4
・トランペット2
・ヴァルヴ式トランペット2
・トロンボーン3
・オフィクレイド
・チューバ
<打楽器>
・ティンパニ2対(奏者4)
・大太鼓
・タンブリン
・シンバル
・トライアングル
・タムタム
・鐘
・弦5部
・混声6合唱(ソプラノ2部、テノール2部、バス2部)
・児童合唱(ソプラノ2部)
ベルリオーズの作品の特徴や魅力は?
最後に、ベルリオーズの作品の特徴や魅力について、
超ざっくりと2つ紹介します。
音楽史や作曲家について興味を持っていただいた方は、
ぜひ評伝やエピソード集などもにも手を伸ばしてみてください!
ベルリオーズの作品の特徴や魅力①、標題音楽の生みの親
まず挙げられのが「標題音楽」の導入です。
「おいおい、標題音楽ってなんだよ?」という方に、ざっくり説明するとこんな感じ👇。
特定の物語性やイメージ、物語、場面などを音楽で表現する音楽のジャンル。作曲家は音楽を使って物語を語り、聴衆に具体的な情景や感情を想像させることを意図した作品ということ。
作品のテーマを決めて「タイトルをつけた作品」と覚えておくと良いでしょう。
「そんなの当たり前では?」と思う方も多いと思いますが、
作品にタイトルやイメージがつけられたのって、意外に最近のことなんですよ!
形式はさまざまで、一例ですが、
・交響詩
・幻想曲
・交響組曲
などに用いられることが多いです。
たとえば、フランツ・リストやリヒャルト・シュトラウスなんかの作品に多いです。
余談ですが、標題音楽への対立軸としてあるのが「絶対音楽」です。
こちらは「音楽のための音楽」という意味合いが強いです。
ベートーヴェンやブラームスなんかが代表。
のちのワーグナー派VSブラームス派の対立は、この対立軸を意味します。
ベルリオーズの作品の特徴や魅力②、革新的管弦楽法
今でこそ、大規模なオーケストレーションは珍しいものではありません。
20世紀に入ってからはグスタフ・マーラーなんかがその完成者です。
しかし、ベルリオーズが生きていた19世紀におけるクラシック音楽では、
大規模なオーケストレーションはものすごく画期的なことでした。
ベルリオーズは楽器の特性や能力を最大限活かし、
オーケストラの多様な楽器を効果的に使うのに長けていたわけです。そこから、それぞれの楽器の色彩を詳細に分析し、組み合わせたことで、
それまでにない大きな音響や豊かなオーケストレーションを生み出しました。
交響曲にトライアングルやシンバルを多用したのも、
ベルリオーズの大きな特徴だと言えるでしょう。
ワーグナーがベルリオーズに心酔したのも、
その作風だけでなく、大胆な構図の改革を支持したからかもしれません。
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ベルリオーズの代表曲まとめ
ということで、ベルリオーズの代表曲8選と作品の特徴や魅力、最高傑作を紹介しました。
どの作品も、初めて聴いた方が多かったのではないでしょうか?
ベルリオーズの作品は聴けば聴くほど、その色彩豊かな作品に引き込まれます。
この記事をきっかけに、ぜひベルリオーズの作品に触れてみてはいかがでしょうか。
・入祭唱とキリエ
・続唱
・奉献唱
・聖なるかな
・神羊誦と聖体拝領唱