パブロ・デ・サラサーテとはどんな人物?生涯や豆知識、エピソードや代表曲を解説!

    燃えるような情熱を表現した『ツィゴイネルワイゼン』の作曲者パブロ・デ・サラサーテ(以下サラサーテ)。
    この記事では、19世紀最高のヴァイオリニストと称された、サラサーテの生涯をざっくりと解説します。

    そのほか、彼にまつわる驚きのエピソード、そして魂を揺さぶる情熱的な代表曲も紹介しますので、ぜひ最後まで読んで楽しんでください!

    >>画像出典:アマゾン:サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン/ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲集

    パブロ・デ・サラサーテの生涯年表

    出来事
    1844年スペイン・パンプローナに生まれる。本名はマルティン・メルチョール・パブロ・デ・サラサーテ。幼少期からヴァイオリンの才能を発揮。
    1856年12歳でマドリード音楽院を修了。スペイン女王イサベル2世の援助を得て、パリ音楽院に留学。
    1857年パリ音楽院で1年でヴァイオリン首席を獲得。以後、演奏活動を本格化。
    1860年代国際的なコンサートツアーを展開し、名声を確立。作曲活動も並行して行う。
    1878年自作『ツィゴイネルワイゼン』を発表。以後、代表作として世界的に演奏され続ける。
    1880〜90年代サン=サーンスやラロらと共演。各地で多くの協奏作品を初演。ヴァイオリン芸術の象徴的存在に。
    1908年フランス・ビアリッツにて死去(享年64)。遺体は故郷パンプローナに埋葬される。

    パブロ・デ・サラサーテの生涯:華麗なるヴァイオリンの魔術師

    violin

    19世紀後半、演奏と作曲の両面で世界を席巻したスペインの天才、パブロ・デ・サラサーテ。

    技巧的で魅惑的なヴァイオリン作品を数多く残し、その名は今なおヴァイオリニストたちにとって特別な響きをもっています。

    そんな稀代のヴァイオリニスト・サラサーテの生涯をざっくりと見ていきましょう!

    ナバラに生まれた神童(1844〜1856)

    スペイン北部、パンプローナに生まれたサラサーテは、5歳のときにヴァイオリンを始め、わずか8歳で公開演奏を果たすなど早くから「神童」と呼ばれていました。

    演奏会での才能に目を留めた王室の支援により、マドリード音楽院、続いてパリ音楽院で本格的な教育を受けることになります。

    フランス語と文化を短期間で習得し、10代のうちに音楽院を首席で卒業。若くして国際舞台への道が開かれました。

    わずか13歳でパリ音楽院ヴァイオリン科で首席になったのは有名な話です。

    パリでの成功と国際的な名声(1856〜1870)

    サラサーテは演奏スタイルにおいて非常に華麗かつ繊細な音色を持ち、フランコ=ベルギー楽派の影響を受けながらも独自のラテン的情熱をにじませた表現が評価されました。特に彼のヴィブラートとスピッカートの技術は、当時のヴァイオリン奏者の中でも群を抜いていたといわれます。

    各地の王侯貴族に招かれ、サン=サーンス、ブルッフ、ラロといった同時代の作曲家から作品を献呈されるなど、その存在感は圧倒的でした。

    作曲家としてのサラサーテ(1870〜1890)

    サラサーテの作品は、聴衆を魅了するだけでなく、演奏技術の到達点を示すような難易度を備えているのが特徴です。『ツィゴイネルワイゼン』はハンガリー系ジプシー音楽の要素を取り入れたエネルギッシュな作品で、ヴァイオリンの全技術を披露するような構成。

    また、『スペイン舞曲集』や『アンダルシアのロマンス』など、自国の民俗音楽を題材にした作品も多く、スペイン音楽の豊かさを世界に紹介する役割も果たしました。

    晩年と功績の継承(1890〜1908)

    サラサーテは晩年まで演奏活動を続け、世界中の音楽都市を訪れました。

    特にアメリカでの成功は大きく、クラシック音楽の普及に貢献した点でも評価されています。

    1908年、慢性気管支炎で亡くなったあと、彼の名前を冠したヴァイオリンコンクール(サラサーテ国際ヴァイオリンコンクール)が創設されるなど、その功績は今なお広く継承されています。

    彼の作品は現在も国際コンクールやリサイタルで定番となっており、多くの若手演奏家にとっての“登竜門”です。

    パブロ・デ・サラサーテと関わった作曲家たち

    • カミーユ・サン=サーンス
      ヴァイオリン協奏曲第3番や『序奏とロンド・カプリチオーソ』など、サラサーテのために書かれた作品が多くあります。演奏家としての信頼が厚かった証です。
    • マックス・ブルッフ
      サラサーテに献呈された『スコットランド幻想曲』は、サラサーテの技術と音楽性を前提にした名作。彼の演奏が作曲のインスピレーションとなっています。
    • エドゥアール・ラロ
      『スペイン交響曲』は、サラサーテのスペイン風スタイルを意識して書かれた代表作。彼の名演によって作品が世界的に知られるようになりました。
    • アントン・ルビンシテイン
      ロシアの大作曲家・ピアニストであり、サラサーテの演奏を高く評価していました。国際舞台で活動する中で親交を持ったとされています。
    • ヨーゼフ・ヨアヒム
      同時代のヴァイオリニストで、ブラームス派を代表する人物。芸術的アプローチは異なるものの、お互いをリスペクトする存在でした。

    天才サラサーテの人物像がわかる豆知識・エピソード5選

    彼の演奏と同様に、その生き方にもカリスマ性が溢れていました。

    ここでは、サラサーテの豆知識・エピソードを5つ紹介します。

    サラサーテの豆知識・エピソード① 愛器は「ストラディバリウス」

    ヴァイオリニストの誰もが憧れる伝説の名器「ストラディバリウス」。その希少性と、数百年を経てもなお他の追随を許さない豊かな響きから、天文学的な価値を持つことで知られます。

    サラサーテは、その中でも特に有名な「ストラディバリウス1724」、通称”サラサーテ”を生涯の愛器としました。

    ストラディバリウス1724は、現在、パリ音楽院に保管されています。

    サラサーテの豆知識・エピソード② 作曲家たちがこぞって曲を献呈

    同時代の多くの作曲家が、彼の技巧と表現力に魅了されました。そして「この曲を完璧に演奏できるのはサラサーテしかいない」と、彼のために次々とヴァイオリンの名曲を書き下ろしたのです。サン=サーンスの『序奏とロンド・カプリチオーソ』や、ラロの『スペイン交響曲』、ブルッフの『スコットランド幻想曲』は、サラサーテに献呈された曲として特に有名です。

    サラサーテの豆知識・エピソード③ 生涯独身を貫いた孤高の芸術家

    サラサーテは、そのキャリアのすべてを音楽に捧げ、生涯独身を貫きました。

    私生活については多くを語らず、その音楽に全てを捧げ尽くすかのようなストイックな姿勢もまた、彼のミステリアスな魅力を高める一因となりました。彼はまさに「音楽と結婚した芸術家」だったのかもしれません。

    サラサーテの豆知識・エピソード④ 驚異の暗譜力と完璧なテクニック

    野外演奏の最中に楽譜が風で飛んでしまうというアクシデントがありましたが、サラサーテは一切動じることなく、完璧に最後まで演奏を続けたという逸話が残っています。これは単に記憶力が良いというだけでなく、音楽の構造そのものを完全に理解し、作品を自分のものにしていたことの証とされています。

    サラサーテの豆知識・エピソード⑤ 生涯持ち続けた「スペインの誇り」

    ヨーロッパ中で名声を博した彼ですが、その音楽の根底には、常に故郷スペインへの深い愛情と誇りがありました。彼の自作曲には、ハバネラなどの舞踊のリズムや、ギターの奏法を模したピッツィカート(指で弦を弾く奏法)、そしてアンダルシア地方のジプシー(ロマ)音楽から影響を受けた情熱的な旋律が色濃く反映されています。

    同じスペインの作曲家ファリャの記事も参考になりますよ!

    【超絶技巧】サラサーテの代表曲3選!情熱と技巧に酔いしれる

    彼の音楽を聴けば、その魅力が瞬時に伝わります。

    ぜひ聴いていただきたい3曲を選びました。

    めっちゃくちゃカッコいい作品ばかりですよ!

    >>アマゾン:サラサーテのCD一覧はこちら。

    サラサーテの代表曲① ツィゴイネルワイゼン Op.20

    サラサーテの代名詞とも言える不朽の名作。

    タイトルの「ツィゴイネル」とは、ドイツ語で「ジプシー(ロマ)」を意味します。
    即興的で物悲しい旋律で始まる前半部から、次第に熱を帯びていき、最後は聴く者の心臓が早鐘を打つような熱狂的で超絶技巧的なパッセージへと展開する構成は圧巻の一言。
    ヴァイオリンという楽器の表現力を極限まで追求した名曲です。

    出典:YouTube

    サラサーテの代表曲② カルメン幻想曲 Op.25

    ビゼー作曲の有名オペラ『カルメン』のメロディを主題に、サラサーテがヴァイオリン独奏のために編曲した、極めて華麗で演奏効果の高い作品です。「ハバネラ」や「アラゴネーズ」といった有名な旋律が、単にヴァイオリンでなぞられるのではなく、 装飾やカデンツァ(独奏者の見せ場)を加えられ、より一層情熱的でスリリングな音楽へと昇華されています。サラサーテの編曲家としての才能も光る一曲。

    出典:YouTube

    サラサーテの代表曲③ サパテアード Op.23

    「サパテアード」とは、フラメンコダンサーが靴のかかとで床をリズミカルに踏み鳴らす、スペインの伝統舞踊です。その名の通り、ヴァイオリンがまるでダンサーのステップのように鋭く小気味良いリズムを刻むのが特徴で、聴いているだけで心躍るような楽しさに満ちています。サラサーテの卓越した技巧と遊び心、そして故郷の音楽への愛情が存分に伝わってくる一曲です。

    出典:YouTube

    パブロ・デ・サラサーテの生涯:まとめ

    今回は、ヴァイオリンの天才サラサーテの人物像と、彼の音楽の魅力に迫りました。

    彼がただの優れた演奏家というだけでなく、スペインの魂を音楽に刻み込んだ情熱的な作曲家であったことが、お分かりいただけたのではないでしょうか。

    『ツィゴイネルワイゼン』に心を奪われた方は、ぜひ他の作品にも触れてみてください。

    彼の技巧の凄み、そしてその奥にある音楽への深い愛情と情熱が、きっと心を虜にするはずです!

    気になった曲を、プロの演奏で楽しもう!

    この記事で気になった作品、耳でも味わってみませんか?
    Amazon Music Unlimitedなら、クラシックの名曲がいつでも聴き放題。
    名演奏を聴き比べたり、新たなお気に入りを見つけたりと、楽しみ方は自由自在!

    今なら30日間無料体験も実施中。
    ぜひ気軽にクラシックの世界をのぞいてみてください。

    >>Amazon Music Unlimitedはこちら!

    最新記事一覧