この記事ではイタリアを代表する作曲家レスピーギのおすすめ代表曲5曲を紹介します。
レスピーギ作品といえば、『ローマの噴水』、『ローマの松』、『ローマの祭り』
の『ローマ3部作』が有名ですが、教会旋法を使用した作品や、
宗教的テーマを用いた分野ででも優れた作品を残しています。
「ローマ3部作以外の作品を知りたい!」という方にはもちろん、
レスピーギの魅力を再発見したい方にとってもうってつけな内容です。
いつものようにざっくり解説ですので、
ぜひ最後までご一読いただき、参考にしていただければ幸いです。
レスピーギのおすすめ代表曲5選
選曲はいつものように筆者の独断と偏見によるものです。
ですが、「この曲は押さえておくと良いかな」という作品ばかりなので、
ぜひ聴いてみてください。
どの作品もレスピーギの上品さが味わえる作品となっています。
レスピーギのおすすめ代表曲その1:ヴァイオリンソナタ ロ短調
1917年に完成したこの作品は、レスピーギの室内楽作品の中でも特に重要な位置を占めています。全3楽章構成で、演奏時間は約25分に及ぶ大作です。
1918年1月、著名なヴァイオリニストのアリゴ・セラートとピアニストのアレッサンドロ・ロンゴによって初めて世に披露されました。
その2ヶ月後には、レスピーギ自身がピアノを担当し、
恩師のフェデリコ・サルティとともに再演を行っています。
注目は第3楽章で、オスティナート(執拗に繰り返される音型)を基調とした、
20の変奏から構成される革新的な構造となっています。
1919年にミラノの老舗楽譜出版社カーサ・リコルディから出版され、
1947年に再版されました。
レスピーギのおすすめ代表曲その2:ミクソリディア旋法の協奏曲
本作は創作背景が面白い作品です。
というのも、本作位は妻エルザのグレゴリオ聖歌研究が、作曲に大きな影響を与えたのだとか。
1925年の夏、驚くべき短期間で作曲されたこの作品は、
古代教会旋法の一つであるミクソリディア調を現代的に解釈した意欲作です。
1925年12月31日、ニューヨークのカーネギー・ホールでレスピーギ自身がピアニストを務め、ウィレム・メンゲルベルク指揮で初演されました。
その後、アムステルダムやベルリン、ローマでも演奏されましたが、
当時の聴衆には理解されず、長らく忘れられた作品となりました。
レスピーギのおすすめ代表曲その3:組曲『鳥』
1928年に完成したこの作品は、17世紀から18世紀の音楽を基に、
鳥たちの姿を音楽で描いた魅力的な組曲です。
全5楽章で構成され、それぞれが特徴的な鳥の動きや鳴き声を巧みに表現しています。
- 前奏曲
- 鳩の優雅な動き
- めんどりの愉快な様子
- 夜鶯の美しい歌声
- 郭公の特徴的な鳴き声
初演は1927年6月、サンパウロ市立劇場で作曲者自身の指揮により行われ、
翌年にはフリッツ・ライナー指揮でシンシナティ交響楽団による演奏も実現しました。
レスピーギのおすすめ代表曲その4:バレエ音楽『シバの女王ベルキス』
1930年から31年にかけて作曲された最後のバレエ作品で、
レスピーギの代表作「ローマ三部作」をも凌ぐ壮大な規模を誇ります。
全曲は約80分に及び、舞台外の演奏者や特別な楽器群、合唱、独唱など、
大がかりな編成が魅力。です
本作は初演時に十数回の公演が行われたものの、
その規模の大きさゆえにレパートリーとして定着することは難しく、
現在では約23分の組曲版が演奏されることが多くなっています。
とくに日本では、吹奏楽版が愛好され、
コンクールなどで演奏される機会も多く見られます。
レスピーギのおすすめ代表曲その5:リュートのための古風な舞曲とアリア
3つの組曲からなるこの作品は、レスピーギがサンタ・チェチーリア音楽院の教授時代に同図書館で研究した古楽の楽譜を基に作曲されました。
各組曲は4曲で構成され、第一組曲が約15分、第二組曲が約20分、第三組曲が15~20分程度の演奏時間となっています。
古いリュート曲を現代のオーケストラや弦楽合奏用に見事にアレンジした本作は、
レスピーギの古楽への深い造詣(ぞうけい)と、
現代的な編曲技法が見事に調和した傑作として評価されています。
レスピーギ作曲『ローマ3部作』について
『ローマ3部作』は現在でも根強い人気を誇り、コンサートなどでもしばしば演奏されています。本作は交響詩スタイルで作曲された管弦楽曲で、リムスキー・コルサコフの強い影響が見られる作品です。
以下では3曲について、ざっくりと見てみましょう。
『ローマの噴水』(1916年)
最初の作品となる『ローマの噴水』は、ローマの四つの噴水を一日の時間の流れとともに描いた印象的な音詩。
古典的な交響曲の4楽章形式を採用し、
各楽章が特定の時間帯と噴水を結びつけています。
構成
- 第1部:夜明けのジュリアの谷の噴水
- 第2部:朝のトリトンの噴水
- 第3部:真昼のトレヴィの噴水
- 第4部:黄昏のメディチ荘の噴水
リムスキー=コルサコフの管弦楽法の影響が顕著に見られのが特徴です。
1917年3月11日、ローマのアウグスト劇場での初演は評論家たちの理解を得られませんでしたが、翌1918年2月にアルトゥーロ・トスカニーニがミラノで行った再演で大成功を収め、以降、最も著名な交響詩の一つとして認知されるようになりました。
『ローマの松』(1924年)
1924年12月に完成したこの作品は、
レスピーギがサンタ・チェチーリア音楽院の教授・院長を務めていた時期の傑作。
1913年にボローニャからローマに移り住んだレスピーギは、
この街の「素晴らしい噴水」と「地平線のあらゆる場所に現れる傘のような松」に深く感銘を受けたと語っています。
構成
- 第1部:ボルゲーゼ荘の松
- 第2部:カタコンバ(古代ローマの地下墓地)付近の松
- 第3部:ジャニコロの松(ローマ南西部の丘)
- 第4部:アッピア街道の松(古代ローマの重要な街道)
本作の特徴は、時間と空間の両面で巧みな構成を持っている点。
4つの楽章は、ローマの周囲を反時計回りに巡りながら、昼から夜へと時を進め、夜明けで終わります。
また、現代の子供たちの遊び声から始まり、
古代ローマの軍隊の行進で締めくくられるという、時代を遡る構成も特徴的です。
こうした背景を知った上で聴くと、音楽の楽しさが広がりますね!
『ローマの祭り』(1928年)
3部作の最後を飾る本作は、古代から現代までのローマの祝祭を描いた壮大な音楽絵巻です。
演奏時間約25分の単一楽章で、4つの部分が切れ目なく演奏されます。
構成
- 第1部:チルチェンセス(古代ローマの円形闘技場での競技)
- 第2部:五十年祭(キリスト教の聖年祭)
- 第3部:十月祭(収穫と狩猟の祭り)
- 第4部:主顕祭(ナヴォーナ広場での祝祭)
1929年2月21日、ニューヨークのカーネギーホールで、アルトゥーロ・トスカニーニ指揮のニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団により初演されました。
レスピーギ自身は、この作品でオーケストラの「ソノリティと色彩を最大限に取り入れた」と述べ、これ以上の大規模な作品は書けないと感じたといいます。
指揮者のヤン・パスカル・トルトリエは、
本作の「洗練されたオーケストレーション、半音階的表現、和声、力強い推進力のあるリズム」を高く評価し、特に最終部「主顕祭」については、その高揚感と音楽的な多様性を絶賛しています。
ちなみに、トスカニーニ指揮の版が名盤とのこと。
レスピーギの代表曲:まとめ
今回は、イタリアを代表する作曲家レスピーギの作品や「ローマ3部作」についてざっくりと解説しました。
リムスキー=コルサコフから強い影響を受けたレスピーギ作品は、
なんといっても「管弦楽の美しさ」と情景的なメロディーが魅力です。
この記事で紹介した作品以外にも、レスピーギは多くの傑作を残していますので、
ぜひご自身のお好みの作品を探してみてはいかがでしょうか。
レスピーギの生涯についてはコチラの記事をご参照ください👇
また、楽器の購入をお考えの方には、こちらの記事も参考になりますよ!
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