今回はおすすめヘッドホンを紹介します。
オーケストラの静かな出だしから、ffで一気に音が開放される瞬間まで。クラシック音楽は「ダイナミックレンジの広さ」と「音の分離」がものを言うジャンルです。
だからこそ、ヘッドホン選びを間違えると、せっかくの名演も情報量が半分になってしまいます。
この記事では、価格帯別に本当に使えるモデルを10本厳選しました。
あわせて、ピアノ歴30年・オーケストラも聴き込んできた筆者が「スペック表には出てこないチェックポイント」もお伝えします!
クラシックにヘッドホン選びが重要な理由
ポップスやロックは「聴かせたい音」をミックスの時点である程度強調して作られていますが、クラシックの録音は基本的に「その場の空気をそのまま収める」ことを目指しています。
つまり、
- pppの弱音からffff※の強奏まで、原音のダイナミクスがそのまま記録されている
- 楽器ごとの定位(オーケストラなら第一ヴァイオリンは左、コントラバスは奥など)に意味がある
- 倍音や残響(ホールトーン)が音楽表現の一部になっている
という特徴があります。
低音を持ち上げてドンシャリにチューニングされた一般的なヘッドホンだと、繊細な情報がつぶれてしまい、極端に言えば「細かなニュアンスが感じ取りにくくなる」ことがあります。
ジャンルに合ったヘッドホンを選ぶことは、実は一番コスパの良い「音質アップグレード」だったりします。
※余談ですが、ラフマニノフの前奏曲「鐘」なんかで出てきます。「フォルテッシシシモ」です。
密閉型と開放型の違い
密閉型と開放型って言葉を聞いたことがあると思います。
その違いはというと、ざっくりとこんな感じです👇。
- 密閉型(クローズド):ハウジングが密閉されていて遮音性が高い。音漏れしにくく、電車やカフェなど外でも使える。ただし内部で音が反射しやすく、開放型に比べると音場は狭くなりがち。
- 開放型(オープンエアー):ハウジング背面がメッシュ状になっていて、ドライバーの背圧を逃がす構造。内部反射が少ないぶん、コンサートホールのような自然な広がりと定位感が得やすい。ただし音漏れするため、自宅などプライベートな環境向け。
結論だけ言うと、「家でじっくり聴くなら開放型」「外出先や集合住宅の夜間練習には密閉型」という住み分けと考えればよいかなと。
なので、この記事では両方のタイプをバランスよく紹介しています。
クラシック音楽におすすめのヘッドホン10選

ということで、さっそく価格別にみていきましょう!
1万円以下で購入できるものもたくさんありますので、ぜひチェックしてみてください!
価格はあくまでも目安です。
おすすめのヘッドホン1. Superlux HD668B(セミオープン型)/目安:4,000〜5,000円
台湾Superlux製のセミオープン型モニターヘッドホン。
低価格ながら音がこもらずフラットな特性で、「開放型ってこういう聴こえ方なんだ」を体験する入門機として優秀です。装着感は価格なりですが、まず開放感のある音を試してみたい人の最初の1本に向いています。
こんな人におすすめ:初めて開放型サウンドを試したい人
おすすめのヘッドホン2. audio-technica ATH-M20x(密閉型)/目安:5,800円
定番のモニターヘッドホン。低音が出すぎず高音も落ち着いた、癖のないフラットな音作りで、宅録・動画編集用途としても人気があります。
ピアノやヴァイオリンなど中高音域が主役の編成を聴くにはむしろ相性が良く、価格を考えると解像度も十分です。
こんな人におすすめ:宅録や動画編集で使えるフラットな音を安く確保したい人
おすすめのヘッドホン3. SENNHEISER HD 200 PRO(密閉型)/目安:9,000〜11000円
ゼンハイザーが「電子ピアノなど、静かに練習したいときにも向く」とうたっているモニターヘッドホン。
ソフトなイヤーパッドで遮音性を確保しつつ、長時間の装着でも疲れにくい設計です。1万円を切る価格でゼンハイザーサウンドの片鱗を味わえる、コスパの良い1本。
こんな人におすすめ:夜間や集合住宅で電子ピアノを静かに練習したい人
2〜3万円:本格的にクラシックを楽しむならこの3本
おすすめのヘッドホン4. SENNHEISER HD 560S(開放型)/目安:19,000〜21000円
「ゼンハイザーの良心」とも呼ばれる定番機。
低音は量感より締まりを重視した素直なチューニングで、聴き疲れしにくいのが特徴です。
価格.comのレビューでもクラシック愛好者から「音作りに恣意的な演出がない」と評価されており、この価格帯でまず検討したい1本です。
こんな人におすすめ:恣意的な演出のない、素直な音で本格的に聴きたい人
おすすめのヘッドホン5. audio-technica ATH-AD700X(開放型)/目安:19,000〜25,000円
軽量なハニカムアルミハウジングを採用した開放型。
中高音の抜けが良く、弦楽四重奏や協奏曲のソロ楽器がくっきり前に出てくる鳴り方をします。
※モデルによって流通量が限られる時期があるため、購入前に在庫状況の確認をおすすめします。
こんな人におすすめ:弦楽四重奏や協奏曲のソロ楽器の抜けの良さを重視したい人
おすすめのヘッドホン6. beyerdynamic DT 900 PRO X(開放型)/目安:35,000〜40,000円
※やや3万円の枠を超えますが、ワンランク上を検討する人向けにご紹介します。
ドイツ製のスタジオモニターで、立体的で奥行きのある音像表現が持ち味。オーケストラの前後の距離感を出したい人、輪郭のはっきりした音が好みの人に向いています。
こんな人におすすめ:オーケストラの前後の奥行き・距離感を出したい人
5万円以上:一生モノを探すならこの3本
おすすめのヘッドホン7. audio-technica ATH-R70xa(開放型)/目安:47,500〜49,000円
約199gという圧倒的な軽さと、癖のない「原音再生」志向のサウンドが魅力のリファレンス機。長時間、交響曲を1曲まるごと聴いても側圧・重量のストレスが少なく、高価格帯への入り口として選びやすいモデルです。
インピーダンスが高いため、しっかり鳴らすにはヘッドホンアンプがあると本領を発揮します。
こんな人におすすめ:長時間、交響曲を1曲通して聴きたい人
おすすめのヘッドホン8. SENNHEISER HD 660S2(開放型)/目安:80,000円〜
名機HD600シリーズの最新形。低域の量感が強化されたことで、オーケストラのコントラバスやティンパニの沈み込みまで見通しよく再現します。
フォルテの押し出しと弱音の繊細さを両立させたい人に向いた、王道の高級機です。
こんな人におすすめ:フォルテの押し出しと弱音の繊細さを両立させたい人
おすすめのヘッドホン9. SENNHEISER HD 800S(開放型)/目安:180,000〜260,000円(変動あり)
番外編として、「いつか手に入れたい憧れの1台」もご紹介します。
オーディオファイルの間で「フラッグシップの代名詞」とされるモデルで、ヘッドホンとは思えないほどの音場の広さが特徴。
ホールの空気感そのものを味わいたい人向けの、まさに一生モノです。
こんな人におすすめ:ホールの空気感まで味わいたい、憧れの1台を探している人
価格表だけでは分からない、こんな人にもおすすめ
価格と音質だけでなく、「実際どう使うか」という視点で選ぶと満足度も変わるもの。
ここでは価格帯の枠に収まりきらない、用途別のおすすめを補足します。
おすすめのヘッドホン10. SONY WH-1000XM6(密閉型・ワイヤレス/ノイズキャンセリング)/目安:約60,000円前後
開放型は音が漏れるため、電車移動中やカフェでの作業用BGMとしては使えません。
「通勤中や外出先でもオーケストラの静かなパートまでちゃんと聴きたい」という人には、業界トップクラスのノイズキャンセリングを備えたこのモデルが向いています。
周囲の生活音を遮断することで、自宅の開放型では味わえない「静寂の中の弱音」を屋外でも再現できるのが強みです。
こんな人におすすめ:通勤中や外出先でも静かなパートまでしっかり聴きたい人
そのほか、シーン別にこんな選び方もおすすめです。
- 夜間や集合住宅で電子ピアノ・声楽の練習をしている人:密閉型のモニターヘッドホン(ATH-M20x、HD 200 PROなど)なら、周囲への音漏れを抑えつつ、自分の音のニュアンスを正確にチェックできます。
- 演奏動画を録音・配信している人:フラットな特性のモニター系ヘッドホンで確認すると、実際の再生環境に近い形でミックスバランスをチェックできます。
- メガネをかけている人・長時間リスニングをしたい人:側圧の強いモデルはこめかみが痛くなりやすいので、ATH-R70xaのような軽量・低側圧モデルを選ぶと快適です。
ピアノ歴30年以上の筆者が本当に重視しているポイント
スペックの数字だけでは分からない、実際に選ぶときのチェックポイントを挙げておきます。
筆者の演奏風景については、インスタグラムに載せています。
PCでご覧の方は画面右、スマホでご覧の方はスクール下にありますので、ぜひフォローもよろしくです!
- 声部の分離:バッハのフーガのような多声部の曲で、それぞれの旋律が団子にならず聴き分けられるか。
- ペダルの減衰の自然さ:ピアノのダンパーペダルを踏んだときの残響が、不自然に強調されたり途切れたりしていないか。
- ダイナミックレンジの再現力:ppの弱音からffの強奏まで、音量差がきちんと表現されているか(安価なモデルほど強奏時に音がつぶれやすい傾向があります)。
- 低域の締まり:低音がボワつくと、和声(特に短調の重なった和音)がにごって聴こえてしまいます。
- 長時間装着の快適性:交響曲は1曲で40分を超えることも珍しくないため、側圧や重量による疲労は音質と同じくらい重要な選定基準です。
よくある質問
Q. 初心者は密閉型と開放型、どちらを選ぶべき?
A. 自宅でじっくり聴く時間が多いなら開放型、家族と同居していて音漏れが気になる、あるいは外でも使いたいなら密閉型がおすすめです。迷ったら、この記事の1万円台の密閉型から試してみるのも手です。
Q. ヘッドホンアンプは必須ですか?
A. HD 660S2やATH-R70xaのようなインピーダンスの高いモデルは、スマホやPCに直挿しでも音は出ますが、本来の実力を引き出すにはヘッドホンアンプの導入をおすすめします。逆にATH-M20xやHD 200 PROなど低インピーダンスのモデルは直挿しでも十分楽しめます。
Q. イヤホンではダメなのでしょうか?
A. イヤホンでも十分楽しめますが、開放型ヘッドホンのような自然な音場の広がりを再現するのは構造上難しい面があります。オーケストラなど編成の大きな曲を聴くなら、ヘッドホンの方が向いています。
Q. ワイヤレス(Bluetooth)でも音質は問題ない?
A. 近年のワイヤレスモデルは音質面もかなり向上していますが、有線の開放型ハイエンド機と比べるとまだ情報量では一歩譲る場面があります。自宅でじっくり聴くなら有線、外出先での利便性を優先するならワイヤレスというように使い分けるのがおすすめです。
クラシック音楽におすすめのモニタースピーカーも、こちらの記事で紹介しています。
まとめ
クラシック音楽用のヘッドホン選びは、「開放型か密閉型か」「予算はどのくらいか」に加えて、「どんなシーンで、何を聴きたいか」まで考えると失敗が減ります。
まずは1万円以下のモデルで自分の好みの傾向をつかみ、そこから予算に応じてステップアップしていくのがおすすめです!
















