今回は、ホルストのおすすめ作品ついて解説します。
ホルストといえば組曲「惑星」の作曲者というイメージがありますが、
調べてみると吹奏楽曲や組曲、歌劇なんかも作曲していて結構興味深い。
音楽教師を掛け持ちしながら作曲したホルストは、
多忙ながらも生涯でおよそ200曲の作品を作曲しています。
今回はその中かから特におすすめの作品を7つ紹介します。
グスターヴ・ホルストのおすすめ作品7選
ホルストのおすすめ作品を7つ紹介します。色々調べてみると、美しいコラールがあったり、バレエ音楽を作曲していたりで、やっぱり才能あったのだな〜と感じました。まぁ、ヒットするかどうかって、時代や流行りもあるので、なかなか難しいですね。それでは作品紹介です。
ホルストおすすめ作品1、『セント・ポール組曲』
1912年から1913年に作曲されたか弦楽合奏曲です。現在では、ホルストが務めていたセント・ポールの名が付されていますが、元々は単に『組曲ハ長調』として発表されました。
1905年〜1934年までセント・ポール女学院の音楽教師を務め、週末やまとまった休日しか作曲できなかったホルスト。
そんなホルストのために、セント・ポール女学院は防音設備を備えた防音室を提供し、ホルストがより作曲に集中できるように取り計いました。
これに感銘を受けたホルストは、防音室のお礼として「セント・ポール組曲」を学院に捧げています。
弦楽合奏として作曲されましたが、より多くの学生が演奏に参加できるよう、ホルストにより木管楽器を加えた管弦楽版も編曲されました。
演奏時間はおよそ13分で、全4楽章構成となっています。youtube動画を見ても結構再生されているので、海外では有名な作品なのかもしれません。
ホルストのおすすめ作品2、『日本組曲』
ホルストが日本を題材にした作品を作曲しているなんて、ちょっと驚きですね。これについては前回の記事で書いていますので、良かったらそちらを読んでください。
日本人舞踊家・伊藤道朗の依頼で作曲されたバレエ音楽です。魅力あふれる作品ですが、エピソードとして興味深いのは、この曲を作曲するためにホルストは「惑星」の作曲を中断したということです。
「惑星」の作曲にはおよそ2年の歳月かかりましたが、2年かかったのはこの「日本組曲」に取り組んだためと言われています。
1915年に作曲され、随所に「日本民謡」の旋律が用いられているのが特徴です。
動画の6:32から始まる楽章では「ねーん、ねーん、ころりよ〜」のメロディが使われているので、ぜひ一度聴いてみてください!!
作品の構成は次の通りです。
- 前奏曲 – 漁師の歌 (Prelude – Song of the Fisherman )
- 儀式の踊り (Ceremonial Dance )
- 操り人形の踊り (Dance of the Marionette )
- 間奏曲 – 漁師の歌 (Interlude – Song of the Fisherman )
- 桜の木の下での踊り (Dance Under the Cherry Tree )
- 終曲 – 狼たちの踊り (Finale – Dance of the Wolves )
ホルストのおすすめ作品3、『我は汝に誓う、我が祖国よ』
エルガーの「威風堂々」と同じく、イギリスの愛国歌として知られるコラールです。組曲「惑星」の「木星」の中間部がメロディーとして使用されています。
この曲には歌詞が付けられていますが、歌詞に合うようホルストによって編曲されています。
イギリス愛国歌であると同時に、イングランド国教会の聖歌としも知られ、歌詞は当時の外交官セシル・スプリング・ライスが担当しました。
この曲を作曲した当時のホルストについて、ホルストの娘イモージェンは、以下のように語ったそうです。
歌詞に曲をつけるよう求められたとき、父は働きづめで大変疲れていて、『木星』の音に歌詞を合わせることに安らぎを感じていた。
ホルストのおすすめ作品4、『どこまでも馬鹿な男』
ホルストはオペラなんかも作曲していたようで、オペラ「どこまでも馬鹿な男」では、台本も手がけています。
本作は1918年から1922年にかけて作曲された1幕からなるオペラです。
実際聴いてみると、色彩豊かで情景的な作品ですが、物語が複雑だったため作品は成功しませんでした。一説によると、登場人物の王女がオペラの世界を表し、馬鹿(農夫)はイギリス国民を表していると言われています。
現在では上演機会はありませんが、結構ホルストの才能がわかる作品じゃないかな〜と個人的に思います。
バレエ組曲として単独演奏されることがあるようで、構成は以下の通りです。
- Andante (祈り)
- 地の精の踊り (Moderato – Andante)
- 水の精の踊り (Allegro)
- 火の精の踊り (Allegro moderato – Andante)
ホルストのおすすめ作品5、『サマーセット狂詩曲』
ホルストが1906年に作曲した狂詩曲です。
狂詩曲とは、民族音楽や叙事詩などをモチーフにした形式自由な作品のことを言います。
タイトルの「サマーセット」とはイングランドのサマーセット地方の民謡を用いたところから付けらました。
ホルストの作品にはほとんど狂詩曲がないので、珍しいな〜と思ったら、民謡収集家のセシル・シャープという人物が作曲を提案したとのこと(作品もこの人に献呈されています)。
でも、この曲聴いても十分魅力ある音楽だと思うんだけどな・・・。
1910年、ロンドンのクイーンズ・ホールでの初演は結構な成功を収め、ホルスト自身も、
「最初の本当の成功」と自負していたらしいです。
作品全体の印象は、木管楽器を効果的に使った「牧歌的な」作品に仕上がっています。
落ち着いて音楽を聴きたい方にとっては隠れた名作だと思います。
ホルストのおすすめ作品6、『吹奏楽のための組曲』
音楽教師であった縁で、ホルストは学生のために吹奏楽作品を作曲しました。
この「吹奏楽のための組曲」はホルスト初期の代表的吹奏楽曲で、ヴォーン・ウィリアムスの「イギリス民謡組曲」や、パーシー・グレインジャーの「リンカンシャーの花束」と並び、吹奏楽の古典として、重要な位置を占めている作品です
吹奏楽をやっていた方にとっては、懐かしい作品なのではと思います。
第1組曲、第二組曲が作曲され、上の動画は「第1組曲」。
1909年頃に作曲されましたが、その目的は詳しくはわかってないらしい・・・。
全3楽章で構成されていて、循環形式が用いられていて、1楽章から3楽章まで続けて演奏されます。演奏時間は約10分程度。
循環形式とは、同じテーマや主題が、各楽章に繰り返し登場する形式のこと。
作品の構成は次の通りです。
第1楽章・・・シャコンヌ
第2楽章・・・インテルメッツォ
第3楽章・・・マーチ
念の為、興味のある方は第2組曲も聴いてみてください!
100万回以上再生されてるので、かなりメジャーだと思います(吹奏楽において)
ホルストのおすすめ作品7、『ムーアサイド組曲』
1927年、BBCと英国ブラスバンド選手権大会・大会委員会の依頼で作曲された作品です。
タイトルの「ムーア」とは、北イングランドからスコットランドにかけて広がる「moorland」という湿地帯から付けられたそうです。
1928年にクリスタルパレスで初演され好評を博しました。こうしてみると、意外とホルストって評価されてる気がする。
まあ、これらの評価を軽く打ち消すくらい組曲「惑星」のできが良かったということか・・・。
こちらも上の組曲と同じく、英国式ブラスバンドを代表する作品として現在も高い評価を得ています。
ホルスト自身による管弦合奏編や吹奏楽編がある他、イギリスの作曲家ゴードン・ジェイコブによる管弦楽編も広く知られています。
楽曲は全3楽章で構成され、この作品でもホルストはイギリス民謡のエッセンスを取り入れています。
ホルストの作品の特徴は?
ホルストの作品の特徴にはどのようなものがあるのでしょうか。
どうやら、好奇心旺盛な性格が作品作りに大きく影響しているようです。
インド文学に没頭する
王立音楽院で作曲やピアノ、トロンボーンを学んだホルストは、同時にインド文学にも強い関心を抱きます。
きっかけについて詳しいことはわかりませんでしたが、インド文学に対する興味は大変強く、世界屈指の名門大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンに通ってまでサンスクリット語を学ぶほどでした。
そして、ホルストはインド文学の要素を次々と自作の作品に反映させます。
その多くが20世紀初頭に作曲された作品で、例えば、
交響詩「インドラ」
オペラ「シーター」、「サーヴィトリー」
合唱曲「雲の使者」
といった作品を発表しています。そのたインドの聖典『リグ・ヴェーダ』にインスピレーションを得た歌曲なども多数残しています。
イギリス各地の民謡収集に熱をあげる
上述したように、民族音楽や叙事詩などをモチーフにした作品を「交響詩」と言いますが、ホルストも民謡を収集し、作品に反映させた人物の1人です。
1900年頃からイングランド民謡に関心を持ち始めたホルストは、作曲家ヴォーン・ウィリアムスらと共にイングランド各地に赴き、民謡収集に熱をあげました。
今回おすすめ作品で紹介した、「サマーセット狂詩曲」および「ムーアサイド組曲」もイングランド民謡がモチーフとして採用されています。
さまざまな作曲家が民謡収集に取り組んでいることを考えると、民謡は作曲家にとって新しいインスピエーションの材料だったのかもしれません。
占星術にも傾倒する
アフリカ民族音楽を題材にした「ベニ・モラ」が失敗に終わり、ひどく落胆したホルストは、友人の作曲家アーノルド・バックスの弟のクリフォード・バックスとともに気分転換のためにスペインに小旅行に出かけます。
この時から占星術に傾倒するようになり、1910年代のホルストは占星術書を読み漁ったと言われています(熱しやすく冷めやすい人かな?)。
そのなかでも「近代西洋占星術の父」と呼ばれるアラン・レオという人物を心酔し、彼の著作が「惑星」を作曲する重要なきっかけとなったようです(「惑星」については次回解説します)
時代的に、1900年代初期は「降霊術」が流行した時代だったので、好奇心旺盛なホルストが占星術に関心を抱いたのも想像に難くないですね。
まとめ
ということで、今回はホルストの作品と特徴を簡単に紹介しました。
細かいことを書きすぎると、なが〜くなってしまうのでここまでにします。
意外にも??ホルストの作品は優れたものが多いと思いますので、
新しい知識としてそれぞれの作品を聴いてくれたら良いなと思っています。