今回はアナクシマンドロスの解説です。
その前に、前回のタレスについてまだ読んでいない方は⬇️もぜひ。
この記事でも書いたように、タレスをはじめとして、アナクシマンドロス、アナクシメネスはミレトス学派に分類される自然哲学者ということもお話ししました。同じミレトス学派に分類されていますが、それぞれ考え方に違いがあるようです。そこで今回は、ミレトス学派の2人目、アナクシマンドロスについてうすーーくご紹介します。アナクシマンドロスは世界を一体どのように考えたのでしょうか。
アナクシマンドロスの生涯について
アナクシマンドロスは、前回ご紹介したタレスより10歳ほど若かったと言われています。紀元前610年から546年頃にミレトスにて活動していました。
もちろん、この年代も「想定」でしかありませんので、厳密な生年月日はわかっていません。なので、「あ〜そう言う人がいたのね」って感じで大丈夫です(笑)。
っていうか、このシリーズ全体がそんな記事です・・・。
一般にタレスの弟子とみなされていますが、実際にそうであったかは今でもわかっていません。年齢が近かったし、活動していた場所も同じなので、知り合いであったと考えても良いかもしれません。
ちなみに、タレスの記事で紹介した、万物の根源を示す「アルケー」という言葉を最初に使ったのはアナクシマンドロスとされています。
タレスとの大きな違いは、タレスが書物を残さなかったのに対して、アナクシマンドロスは書物を書いたと言われています。
もちろん現代ではその大部分が失われていますが、「自然について」や「地誌」、「恒星(こうせい)について」などの著作を書いたのではないかと考えられています。
これを裏付けるものとして、紀元前1世紀の地誌家ストラボン(覚えなくてよいです)が、アナクシマンドロスを地理学の人物として紹介していることから、何らかの著作を残しているのではないかと考えられます。
そしてアナクシマンドロスはギリシャにおいて最古の散文を書いた人物でもあります。
紀元前2世紀頃の年代学者アポロドロス(こっちも覚えなくて大丈夫)の『年代について』によれば、第58回オリンピア祭年の2年目(紀元前547〜546年頃)の頃に64歳だったという記録があるそうです。
残念ながら、どのような最後を迎えたのかはわかりません(少なくとも僕は)。
アナクシマンドロスの哲学、「ト・アペイロン」って?
この世界を神話的に説明するのではなく、人間の知識や観察を通して「合理的に説明しようとした」自然哲学者たち。
タレスは万物の根源を「水」と定義しましたが、アナクシマンドロスはタレスとは違った考えを持ちました。
結論から言ってしまうと、アナクシマンドロスは万物の根源を「無規定なもの(無限定・無尽蔵なもの)」と考えました。これは哲学史的には「ト・アペイロン」と呼ばれていて、意味は同じです。
は??。急に「無規定なるもの」なんて言われてもわかんないわよ!!。ト・・・何ですって???
実はこの「ト・アペイロン」について、おそらくアナクシマンドロスの言葉であろうとされる断片が残されています。その内容はこんな感じ↓
存在するものどもは、それらがそこから生成してきたところの、そのものへと必然に従って、また消滅するのである。
というのも、それらは、時の定めに従って、互いに不正に対する罰を受け、償いを支払いあうことになるからだ。ーアナクシマンドロスー
な、なんですって???
さっぱり意味わかんないんですけど!!!💢👊
何を言っているのか分かりにくいですが、これは万物の根源が「水」であると定義したタレスに対する疑問でもありました。
というのも、タレスの言うように万物の根源が「水」であるならば、「なぜ火が存在しているのか?水とは正反対の性質である火が水から生まれるのはおかしい」とアナクシマンドロスは考えたからです。万物の根源が「水」ではない以上、それらを生み出す「もっと根源的なものがあるはずだ」と考えたのがアナクシマンドロスの大きな功績です。
つまり、もっと疑問の余地がない説明があるはず!!!って考えたってことです。相反する性質は水や火だけではなく、「乾いている・湿っている」なんかも含まれます。
それどころか、この宇宙に存在しているありとあらゆるものを作り出す、「根源的な何かがあるはずだ!!🙌」とアナクシマンドロスは考えたわけです。
あらゆるものの根源、それが「ト・アペイロン」
なんだかわかったような、わからないよーな・・・。つまり、物事の最初の最初ってこと?
万物の根源である「ト・アペイロン」とは、宇宙に存在するあらゆるものの「元」になっている「無限」で「無尽蔵」で「無規定」なものって感じです。
万物はそれ(ト・アペイロン)から生まれ、そこから生まれたものは時間を通じてさまざまな事柄を経験し、やがてそれに帰っていく。
そして「ト・アペイロン」は、現実に存在するあらゆるものより、量・質においても大きく、滅びることも生まれることもない「何か」。ありとあらゆる可能性を持つ「何か」としか言えない「何か」(なんのこっちゃ)。そして永遠の動きを持ち、そこから生まれたものを動かし続ける「何か」です。
「何か」ばっかりですが、だからこそ「ト・アペイロン」だ====!!!と覚えておいてくれれば良いです。あえて言うとすると「神様的なもの」をイメージすると良いかもしれません。
みなさんだったら、「ト・アペイロン」についてどんな考えを持ちますか??
アナクシマンドロスのエピソードは?
少しだけ難しいお話をしてしまいました。「難しい話を極力しない」というブログのため、アナクシマンドロスの哲学はこの辺にしておきます。また補足を思いついたらリライトしてみます。
アナクシマンドロスが考えていたこと
自然哲学者だったアナクシマンドロスは、上述した「自然」や「星々」、さらには「天球」など、物事を総合的に考えていた哲学者でした。
「ト・アペイロン」は何だか難しい話ですが、物事の根源を考えるという意味では、現代の素粒子物理学っぽいところがあるかもしれません。
アナクシマンドロスについては、他に次のことが伝えられています。
- 黒海のアポロニアの植民を指導・指揮した
- 天体を観測して、夏至や冬至を発見した
- 人類で初めて「天球儀」を発明した(現物は残ってないけど)
- 海や陸の輪郭を記載した地図を書いた
- 地球は宇宙の真ん中にあると考えてた
- 人間が魚、あるいは魚のようなものから生じたと考えた
タレスの場合と同様に、現代の視点からすればアナクシマンドロスの考えも突拍子もない考えかもしれませんが、「自分の頭で考える」って意味では、アナクシマンドロスもまた真の哲学者と言えます。
まとめとおわり
今回はミレトス学者の2人目、アナクシマンドロスについてご紹介しました。僕の古い記憶と資料を見ながら書いていますが、「ト・アペイロンって何だっけ?」と思ってひさ〜〜〜しぶりに調べました(笑)。
ミレトス学派については、次のアナクシメネスで最後になります。しばらくソクラテス以前の手学者シリーズを書こうか考え中です。意外とギリシャ神話の紹介なんかも面白いかな〜と思っています。
前回のタレスについてはコチラ!
などなど